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ユバンキのトゥクマンの月

亡命前夜の不安を昇華させた”アタウアルパ・ユパンキ”が歌うサンバ曲の「トゥクマンの月」は1948年に作られた。
ユバンキに愚作は一つもないといわれるが、中でもこの曲は彼の最高傑作とされる名曲中の名曲で、半ば亡命のような格好でパリに渡る前の不安な気持ちがここに歌われている。


月が照っているから わたしが月に唄うわけじゃない
唄うのは月が知っているからだ わたしの、長いみちのりを


という一節から始まるが、ユパンキとても月が知る由もないのを百も承知でこう唄わずに
いられなかったに違いない。
それ以前からアルゼンチンでは民政と軍政の交代が何度かあったが、ユパンキは軍事政権に反対の立場で共産党に入っていたから、時の政権から睨まれて活動を制限されたり、投獄されたりした結果の国外逃亡だった。
ユバンキはパリを中心にしてヨーロッパに1952年まで4年間も滞在し、その間にはエデイットピアフの知遇を得たことからパリでコンサートを開いたり録音なども残せた。それがACCディスク大賞に輝いた事で故国の政府の態度も軟化し、それを受けてユパンキは共産党を離党するなどの妥協をしたうえでユパンキは帰国した。


一方、ペロン政権が1950年代に打ち出したアルゼンチン独自の芸術や芸能振興策をバックにフォークローレが見直されたつつあったこともユパンキに幸いしたと思われる。それでも暫くはなにかと制限があったようだが、「霧が晴れて月が唄うだろう」と歌詞にあるように、次第にユパンキの活動は活発になった。それと共にユパンキの存在は重みを増していった。。

トゥクマンの月
月影の道をゆく私には 只一人の連れ貴方に歌おう
行く道を照らす貴方に唄おう
ああ トゥクマンの夜 月よ貴方に
カルチャキ族の太鼓 ガウチョ達の群れ
谷間の道をゆく ガウチョ達よ

踏み迷う霧に行方を見失っても
貴方が再び 輝く時は
この胸の底から 歌え 歌え 歌え!

悩みを抱いてか アチュラルの野辺で
きびの穂に くちづける青い月を見た
ああ トゥクマンの月よ 貴方も独り
寄り添いながら遠い道を 巡る月影に応えて唄え
ユバンキのトゥクマンの月_c0000146_14412953.gif

by g_vocal | 2006-09-13 12:53 | ラテン
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